遺留分侵害額請求の時効は何年?時効の完成を防ぐ方法は?
遺言や生前贈与によって、本来相続人が最低限保障されるべき取り分(遺留分)が侵害されるケースは少なくありません。
上記の場合、相続人は遺留分侵害額請求によって不足分を取り戻せます。
しかし遺留分の権利は無制限に主張できるものではなく、法律で「時効」が定められている点に注意が必要です。
今回は、遺留分侵害額請求の時効が何年なのか、そして時効の完成を防ぐためにどのような方法があるのかを確認します。
遺留分侵害額請求の時効
民法第1048条によれば、遺留分侵害額請求の時効は以下のように定められています。
- 相続開始および遺留分侵害を知ったときから1年
- 相続開始から10年(いわゆる除斥期間)
ここでいう「知ったとき」とは、相続が開始したこと(被相続人の死亡)と、遺言や贈与によって自分の遺留分が侵害されている事実を具体的に認識したときです。
遺産分割協議や遺言の開示を通じて、初めて内容を知った場合などが該当します。
遺留分の侵害額が明確にわからなくても、侵害の事実を認識した時点から時効が進行します。
相続人間で話し合いが続いていても、時効は進行するため注意が必要です。
時効の完成を防ぐ方法
まずは内容証明郵便で催告し、必要に応じて調停や訴訟に進むのが基本的な流れになります。
2020年4月1日以降に開始した相続については、改正後の民法のルールが適用されます。
以前の「中断」「停止」といった言葉は廃止され、代わりに以下の2つの概念に整理されました。
- 完成猶予:時効のカウントが一時的に止まる
- 更新:時効の期間がリセットされる
時効の完成猶予となるケースは、以下のとおりです。
- 裁判上の請求や調停、支払督促の申立て
- 強制執行や担保権の実行などの法的手続き
- 仮差押え・仮処分
- 内容証明郵便での支払い催告(通常6か月の猶予効果)
- 双方が協議を行うことに合意した場合
一時的な猶予で終わらず、「時効期間がリセット」される場合もあります。
たとえば以下のようなケースです。
- 裁判を経て権利が確定判決により認められた場合
- 強制執行や競売などの手続が完了した場合
- 相手方が権利を認める発言や行為をした場合(承認)
重要なのは、「訴訟を起こしただけ」では時効が更新されず、完成猶予にとどまる点です。
最終的に判決や和解で権利が確定することで、初めて更新となります。
したがって、旧法と比べると用語上の整理は変わりましたが、実際に取るべき手続の流れはほとんど変わっていません。
まとめ
遺留分侵害額請求の時効は、相続開始と侵害を知った時から1年、または相続開始から10年のいずれか早い方で完成します。
1度時効が完成すると、正当な権利であっても請求できなくなります。
時効完成を防ぐには、内容証明による請求や調停・訴訟の申立など、法的に有効な手続きを行うのが不可欠です。
個人での対応は難しい場合も多いため、少しでも不安を感じたら早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
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